4人が本棚に入れています
本棚に追加
序章 青春の終わりと苦いお茶
それは美しかった。
水晶のごとききらめきをおびただしく放つ螺旋が目に眩しい。
白銀の氷雪の嵐がライラの身体を打つ。
突風の嵐の中、繊細な氷の糸のようなものが寄り集り、束になり、螺旋になり、螺旋が重なってさらに螺旋して伸びていく。
(どうして??)
信じがたい光景だった。
有り得ない現象だった。
(どうして!?)
氷雪の螺旋はさらに伸びつつ、上昇を始めていた。
(ま、まさか。)
空間からの離脱を試みているのはあきらかだった。
離脱してしまったら取り返しがつかない。
朗らかな哄笑が辺りに響く。
「リアナ!!リアナ!?」
風に吹き飛ばされまいと踏ん張りながら、声を限りにして叫んだ。呼びかけた。
彼女に心はまだあるのだろうか。
良心は!
(リアナ!)
螺旋の回転がますます速くなる。
もう目を開けていられなかった。
飛び散る氷が身体中に吹きつけ、ライラは痛さのあまりうずくまった。
「リア、ナ。」
こんなことって、こんなことって。
いや。何が起きた!?
これは、これは、間違いなく変形だ。
「ライラ。」
呼びかけに思わず顔をあげた。
「ライラ。ジユウダワ。コンナニモジユウナノ。」
「戻ってきて!!」
氷雪の螺旋が突如花弁のように花開いた。そこには氷の彫刻のようなリアナの姿があった。
「ジユウナノ。」
リアナの変わり果てた姿に息を呑んだ。
「何をするつもり!?」
「ヤットワカッタ。コレガアルベキミチダッテ。」
「あるべき道!?リアナ、わからない!戻ってきて!!」
「ダメ。」
「どうして!?」
「モウスグ、アア、モドレナイ、モドラナイ。」
ライラは愕然とした。
「異形のものになりはてつつあるのよ!?どうしてよ!」
「コワクナイ、モウコワイコトハナイ・・・。」
リアナの言葉に呼応するように氷の花弁が閉じようとしている。
視界が見えなくなっていく。
「友達を忘れるの!?!?」
「トモダチ・・・。トモダ、チ・・・?」
嵐が更に激しさを増す。
「そうっっよっ!!行か、ないっでっっ!!」
高らかな哄笑が辺り一帯に響き渡った。
「ジユウダ!コワクナイ!ジャマサセナイ!!」
閃光がライラの目を射ぬいた。
そして嵐がはじけた。
あああああ!!
ライラの身体は吹き飛ばされた。
空間からの離脱だ!
「リアナーっっ!!」
「サヨナラ。ライラ。」
それがリアナの最後の言葉だった。
ライラは気を失った。
リアナ。
リアナ。
どうして?
静寂に満ちた闇がライラを包んだ。
最初のコメントを投稿しよう!