序章 青春の終わりと苦いお茶

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序章 青春の終わりと苦いお茶

それは美しかった。 水晶のごとききらめきをおびただしく放つ螺旋が目に眩しい。 白銀の氷雪の嵐がライラの身体を打つ。 突風の嵐の中、繊細な氷の糸のようなものが寄り集り、束になり、螺旋になり、螺旋が重なってさらに螺旋して伸びていく。 (どうして??) 信じがたい光景だった。 有り得ない現象だった。 (どうして!?) 氷雪の螺旋はさらに伸びつつ、上昇を始めていた。 (ま、まさか。) 空間からの離脱を試みているのはあきらかだった。 離脱してしまったら取り返しがつかない。 朗らかな哄笑が辺りに響く。 「リアナ!!リアナ!?」 風に吹き飛ばされまいと踏ん張りながら、声を限りにして叫んだ。呼びかけた。 彼女に心はまだあるのだろうか。 良心は! (リアナ!) 螺旋の回転がますます速くなる。 もう目を開けていられなかった。 飛び散る氷が身体中に吹きつけ、ライラは痛さのあまりうずくまった。 「リア、ナ。」 こんなことって、こんなことって。 いや。何が起きた!? これは、これは、間違いなく変形だ。 「ライラ。」 呼びかけに思わず顔をあげた。 「ライラ。ジユウダワ。コンナニモジユウナノ。」 「戻ってきて!!」 氷雪の螺旋が突如花弁のように花開いた。そこには氷の彫刻のようなリアナの姿があった。 「ジユウナノ。」 リアナの変わり果てた姿に息を呑んだ。 「何をするつもり!?」 「ヤットワカッタ。コレガアルベキミチダッテ。」 「あるべき道!?リアナ、わからない!戻ってきて!!」 「ダメ。」 「どうして!?」 「モウスグ、アア、モドレナイ、モドラナイ。」 ライラは愕然とした。 「異形のものになりはてつつあるのよ!?どうしてよ!」 「コワクナイ、モウコワイコトハナイ・・・。」 リアナの言葉に呼応するように氷の花弁が閉じようとしている。 視界が見えなくなっていく。 「友達を忘れるの!?!?」 「トモダチ・・・。トモダ、チ・・・?」 嵐が更に激しさを増す。 「そうっっよっ!!行か、ないっでっっ!!」 高らかな哄笑が辺り一帯に響き渡った。 「ジユウダ!コワクナイ!ジャマサセナイ!!」 閃光がライラの目を射ぬいた。 そして嵐がはじけた。 あああああ!! ライラの身体は吹き飛ばされた。 空間からの離脱だ! 「リアナーっっ!!」 「サヨナラ。ライラ。」 それがリアナの最後の言葉だった。 ライラは気を失った。 リアナ。 リアナ。 どうして? 静寂に満ちた闇がライラを包んだ。
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