第1章

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 むかしむかしの、ある国のお話。ある年の早春の事、隣国に大きな地震災害があった。その十日あまり経った頃。  仕事を辞めたばかりの青年ヒカルは悲しみにくれ、寄る辺ない気持ちになっていた。街を歩いていたら、美しい少女の声で歌が聞こえてきた。あまりの美しさに耳を傾けて声の行方を探した。路地を曲がると、カゴを持った少女が歌っていた。歌が終わると、ヒカルは思わず拍手をして近づいた。少女はルリと名乗った。ふわりとした赤いワンピースを着て籐で編まれた手付きカゴを持っていた。中にはペンダント、ブローチ、指輪などのアクセサリーの数々が入っていた。ヒカルはカゴから小さなピンバッチを見つけ、手に入れるべく一枚のコインを支払った。お金の一部は隣国の災害地に渡ると言う。  再びルリの歌声が聴けたのは半年後のラジオ番組だった。歌声と共に、家の中で眠っている古いアクセサリーを隣国に贈ろうというルリの呼びかけが聞こえて来た。宝石は被災地に夢を与えるという。宝石加工工場の親方も一緒に出ていて語るには、  「被災地に夢を与えるべくアクセサリーを贈ります。私達は日々尽力しています。真珠や銀のアクセサリーは集まるのですが、なかなか集まらない宝石があります。それは、やはりダイヤモンドですね。皆様、是非お家にご不要なダイヤモンドの指輪がありましたらご協力をお願いします」と訴えていた。
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