第1章

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 「そのダイヤの指輪を貰う権利をうちの工場にくれないだろうか?実は昔からダイヤモンドの良い石を探していた。うちの技術で流行りのデザインの指輪に仕上げたら素晴らしい宝石になるし、ひいては我が国の宝石界の為にも世の中の為にもなる」と。  ヒカルは親方にダイヤの指輪をゆずる事にした。世話になってる事もあったが国の宝石界や世の中の為になるならと思った。指輪を貰い受けに行ってきた次の日に親方が言った。  「ありがとうーありがとうー、感謝するよ。鑑定してみたら大変な素晴らしいダイヤモンドだったねぇ。君のおばあさんは素晴らしい石を持っていたんだ。ところで、実はここの工場で加工してるのは、所詮、まがい物のアクセサリーなんだよ。君には本物の宝石加工職人さんを紹介するから」ヒカルは、「まがい物」という言葉の意味がわからなかった。「そんな事を言われたら私は悲しいですから、ここに居させてほしい。今までの技法を教えてください。その、まがい物の技術を教えてください」 と言った。  親方は、誰にも理由を言わずに毎晩遅くまで工場にいた。手に入れた古いダイヤモンドの石を台座から外し、今の流行りの形に加工しようと試みていたようだった。しかし、考えつくあらゆる方法や、工場のどんな工具を使ってしても硬いダイヤモンドを削る事はおろか磨く事も出来なかった。
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