第一章

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オレは、海の見える瀟洒な教会の末席に座っていた。 今日は、オレの同期の結婚式だ。噂を確かめるべくオレは目を皿のようにして花嫁の入場を待ち構えていた。 荘厳なオルガンの音楽と共に花嫁が入場してくる。 ヴェールの上からでも、彼女が噂どおりの人であることがわかる。 美咲はとにかく評判の花嫁だった。 育ちの良い美人、性格も良く、料理上手で家庭的。おまけに実家は財産家。 男たちはこぞって彼女をものにしようと涙ぐましい努力をしていた。 毎日のように誰かしら男が彼女をお迎えに来ていたらしいし、誕生日には何十人もの男が花束を持って会社の入り口に列をなしていたらしい。 普通なら公私混同とイヤな顔をされるのかもしれないが、彼女のあまりの素晴らしさに誰も何も言わなかった。 そんな彼女を射止めたのが、チビ、デブ、ハゲで三重苦と言われていた、オレの同期だった。 彼女の選択は周りの皆を驚かせた。 普段彼女の人気ぶりをやっかんでいた同期の女たちでさえ、よりにもよってあんなヤツと結婚することないよ、とか、絶対後悔するよ、とみな異口同音に忠告していた。 男たちは大いに勇気づけられた。アイツに出来てオレにできないはずはない、とどの男も高嶺の花に果敢に挑戦し、玉砕していた。 オレの同期が筋違いの恨みを買ったのは言うまでもない。 花嫁が祭壇に向かう姿を見ながら、花嫁の輝くような美しさに圧倒されていた。
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