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花嫁はどういう気まぐれか、オレを選んだ。
オレはかなりのイケメンだったから、周りの者は花嫁の判断に納得したようだった。
しかし、オレが喜んだのも束の間、花嫁の真の目的は、同僚がどうして逃げ出したのか知りたかっただけである。
オレは同僚の家庭を訪問した。
いまにも崩れそうなぼろアパートだ。
ブス女はにこにこと嬉しそうに、ごはんとみそ汁とさんまの塩焼きをふるまってくれる。それに申し訳程度に漬け物を添えてあるという、極めて簡素な献立であった。
オレは美咲の家で振る舞われた、かにの出汁が効いたみそ汁と、筑前煮、茶碗蒸しに酢の物ときんぴらが添えられた昨晩の完璧な夕食を思い出す。
この料理をそでに振って、さんまとたくあんを取ったのか?
それに、美咲の家は、実家が持っている立派なマンションの一室で3LDKのゆったりとした間取りに、美咲のセンスで並べられた品の良い家具が配置されていた。
それと引き換えに、6畳一間のボロアパートを取ったのか?
信じられない。
同僚が宇宙人のように思えて来た。
「で、肝心の夜の方はどうだったんだ?」
オレは、安物のチューハイですっかり悪酔いしてしまい、聞いてはならぬことを聞いた。
三重苦の同僚はつるんとした頭を一なでしてから顔を赤らめた。
「それがボクのような者にはもったいないぐらいで……」
オレは詳細を聞きながら鼻血を出しそうになった。
じゃあ、一体何が不満だったんだ?
美人で聡明、家庭的でメシも旨い。さらに床上手な上に実家が裕福ときている。
それがな……、
だんだん、ムンクの叫びに出てくる奇人のような顔に見えてきてしまったんだ……。
男はポツリポツリと話し始めた。
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