第一章

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最初に違和感を感じたのは、婚約指輪を渡したときだという。 彼女の目が少し大きくなったような気がした。 それから結納を交わした時。 その目が若干つり上がったように見えた。 もちろん、男は目の錯覚だと思っていた。 しかし、それから彼女をみる度に、ギョロ目がひどくなり、少しずつ頬はこけ、口がOの字に近づいていった。 男は彼女を見る度に、目をごしごしこするのがくせになった。 彼女がそんな風に見えるようになった以外は、別段異常はなかった。 視力も落ちていなかったし、何かが見えにくい、ということもなかったらしい。 念のために、視力検査もしたし、眼科の先生にも見てもらったが極めて正常だという判断が下された。 それで、男は、彼女のココロの叫びの表れではないかと考えるようになった。 彼女は本当は自分のような男と結婚したくないのではないか、と。 完璧な彼女に対して、自分は何も誇れるものがない。 屈折した男の心のうちが彼女の顔を歪めてしまったのではないか、と男は次第に気に病むようになっていった。
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