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そんな時、女の顔を見ると、男は心底心が安らいだ。
かつて自分が愛していた婚約者に似てきたからだ。
気のせいか、話し方もしぐさも婚約者に似て来るように思えた。
男は何が何だかわからなくなっていた。
そんな状態で結婚式の日を迎えたのだ。
女が教会に飛び込んで来た時、だから、男は、花嫁のヴェールをあげて、二人の顔をまじまじと見比べた。
そして、同僚は、女と逃亡したのであった。
オレは、同僚に何と声をかけたらよいかわからなかった。もはや男をなじることも非難することもオレにはできなかった。
オレは、同僚の話を正直に美咲に伝えた。
美咲は、かすれた声で、そう……、と呟いただけだった。その憂えた表情はどこか寂しげで、艶があった。
オレは思わず美咲を抱きしめた。
「そんな顔、するなよ……。オレが一生お前のそばについててやるからさ……」
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