第一章

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あれから二年後。 ついにこの日を迎えた。 オレたちは、美咲の悲しみを乗り越え、とうとう結ばれることとなった。 オルガンの音が鳴り響き、出席者が全員起立をする。 オレは緊張した。 父親に連れられた美咲がしずしずとオレのところに向かってくる。美咲は幸せをかみしめるようにゆっくりと歩いていた。 オレたちは必ず幸せになる。 そう確信したその瞬間、教会のドアがギイと開いて、男が飛び込んで来た。 チビでデブでハゲの男だった。 どこか同僚に似ている。 美咲は、驚いてその男を見つめる。それからゆっくりとオレの方に視線を移した。 しばらくの間、呆然と見比べているのがわかった。 美咲の目は潤んでいる。大粒の涙が一粒はらりとこぼれた。 「……ごめんなさい」 美咲は、男に連れられて教会を後にした。 ………何てこった! (完)
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