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彼女は午前中どこかに出掛けていたと思ったら、戻って来るやいなや、昼食の準備をして店に出ていった。ゆっくり休んでいてくれと言われたのだが、休みだというのに店に出ていく彼女が気になり、私も店へと出ていく。
「あ、淳さん休んでていいって言ったのに」
そういう彼女は、店内の掃除をしているようだった。
「休みだというのに、働かなくていいんだよ」
思わず止めてしまった。年末の大掃除をして以降、まともな掃除はしていない。そんな店内はそこかしこに埃が溜まっているのだが、休日にやらせるものではない。
「だって、営業日にはなかなかできないじゃないですか。お花も買ってみたんです。飾っていいですよね?」
「いいですが、いくらしましたか?経費で落としますので」
ダメと言ったらどうしていたのかと思いながら金額を確認するが、領収書はもらってきていないようだった。
「店のためを思ってくれるのは有り難いですが、君が身を削る必要なんてないんですよ。これからはこういうものは領収書をもらってきなさい。今日の分は私が立て替えます」
こればかりは譲れないと思い、適当だと思われる額を彼女に渡した。
「え、いえ。私が好きなことをしているだけで。ご迷惑を掛けてしまっていますか?」
しおらしくそう問いかける彼女は、どこか傷付いているようだった。
「いや、君がいいならいいですよ。もう、好きにしてください」
私は負けた、というように眉を下げた。
「その代わり、ちゃんと経費で落とせるものは落とします。君も、休めるときは休みなさい。今日は私も手伝います。どうせ、休みだからといってすることもないですしね」
「ありがとうございます!」
おもちゃをもらった子供のように嬉しそうに彼女は礼を言った。結局、彼女のペースに乗せられてしまうのだ。彼女が来てからずっと、気付けばこんな毎日になっていた。
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