営業開始。

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「え、ここに来た理由ですか?」 一日の営業が終わって、少し遅めの夕食を部屋で取っていた。 「君みたいな子が、こんなところで働く必要なんてないでしょう」 「私みたいな?」 「器量が良くて、要領もいい。働き口なんていくらでもあるだろうに」 彼女の作ってくれた料理を口に運びながら、今日浮かんだ疑問を口にする。本当に、こんなところで働くにはもったいなさ過ぎる。 「んー、適したところで働くよりも、やりたいことやった方が人生楽しいんじゃないかと思って。それにここの仕事、自分では向いてると思うんですよね」 彼女は、何もおかしなことはないとでも言いたげに片眉を下げる。ここ数日で増えた客入りを見れば、彼女がこの仕事に向いていることは間違いない。常連客も相変わらず来てくれているし、店の雰囲気が変わったことによっての弊害は何一つなかった。むしろ、こちらとしては有り難いくらいだ。 「いや、私は有り難いんですが」 「なら、問題ないですよね。明日でお試し終わっちゃうんですけど、私、ここにいても大丈夫ですか?」 元々、彼女が勝手に言い出したお試し期間だったが、本当に断るわけにはいかなくなってしまった。宿のない彼女を追い出すのも心苦しい。不謹慎なこの生活を続けるのはいささか問題なのではないかと思うのだが、やはり彼女は少しも意に介していないようだ。なんとも言い難いこの感情を、彼女が知る由もない。
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