金田一龍彦からの挑戦状

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金田一龍彦からの挑戦状

 桜は北枕出版に入社した。渋谷駅の近くにオフィスはある。タイムカードを切る。ジッジジーッ。    2017・6・12 08:01 瀧口が、「よう」と軽く手を上げた。  おまえは東京ラブストーリーの江口洋介か?  瀧口も今年入ったばかりの編集マンだ。  桜はさらっと無視して、自分の席に座る。トートバッグから午前の緑茶を出す。ペットボトルのキャップを開ける。自分の手を見つめる。  カサカサだ。振られてばかりで心もカサカサだ。午前の緑茶をゴクゴク飲む。  「知ってっか?正午までに飲み干さないと、ドッカンと爆発するんだぜ?」  瀧口が、掌で爆発のジェスチャーをしながらウィンクした。 「くっだらない」  桜はわざとらしく溜め息を吐いた。ノートパソコンを開く。会社が支給してくれたモノだ。大切に扱おう。ハンカチで埃を拭った。 「高梨さんって潔癖症?」  瀧口は相変わらずシツコイ。塩味顔のデブ、身の程を知れ!  桜はパソコンの電源ボタンを押した。シュイーン。さぁ、戦闘開始だ。  ランプがオレンジからグリーンに変わる。 『桜!邪魔者を排除せよ!』  脳内に007のMが現れた。あの婆さん、意外とあっけなく死んじゃったな。  空想内で瀧口に桜キックを喰らわせた。バク転しながら、キックを連打する。  ヤ、ヤ、ヤ、ヤ、ヤ、ヤ、ヤ!! 『グーハー、グーハー、グーハー!』  瀧口が謎の叫び声を上げながら倒れる。  メールが1件届いていた。メールを開いた。 《金田一龍彦からの挑戦状》 【醜い街に棲む偽者を見つけ出せ!  制限時間は8時半までだ。探せなかった場合はビルごと爆破する!】  送り主の正体を知り、青色吐息だ。 「瀧口君?こー見えても忙しいんだけどなぁ?」  真後ろの席でガサゴソ音がする。また、カロリーメイトか?独身男子は辛いわねぇ~? 「ジョークじゃねぇぜ?俺はこんな会社、大嫌いだ。何で、よりにもよって北枕に入ったかな?」  パソコンのデジタル時計は08:10だ。  始業開始まで暇だし?つきあってやるかな?  
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