翔べ!マキシム

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翔べ!マキシム

 マキシマムザホルモンか?俺は。久々に吸うシャバの空気はうまい。  栗の花の匂いがどこからともなく漂ってくる。  宇都宮か、昔より綺麗になったな。足銀が破綻した頃はひどかった。  109やロビンソン百貨店も、その煽りで潰れた。  東武宇都宮駅近くにあるパン屋に入った。コロネパンとジャムパン、ブラックコーヒーを頼んだ。  バタ子さんに似た店員にクスクス笑われた。 「俺みたいのが、コロネ食っちゃ可笑しいかい?」 《おい、矢追町でコロネだ。》  七曲警察署の山村刑事が頭の中で言った。若い頃、世話になったっけ? 「いいえ、おにわいですよ?」バタ子が噛んでる。 「お似合いだろ?ラリってんのか?」  バタ子は足が細く、セクシーなストッキングを穿いている。顔は地味だけど、スキモノか?  テラスで濃厚な珈琲の薫りを嗅いでいると、グレーのボディーカラーをしたトラックが路地裏に入ってきた。よく、見るとコンテナにはポツポツ穴が開いている。  特警警備車だ。あの穴は銃眼って言って、車内から狙撃出来る仕組みになっている。 「畜生、田所の野郎だな!?」  銃眼にアサルトライフルのマズルが差し込まれた。俺はテーブルの下に隠れた!  バララララララララララララッ!  カップやバスケットが砕け散る!  クソッ!これまでか!?  バスン!バスン!バスン!チュキュン!  銃声が止んだ。 「マキシム!出てこい!!」  警備車のスピーカーから望月の声が響いた。  望月は東武署の中堅刑事だ。 「巻嶋だよ!」 「おめぇはサイボーグか!?」 「今頃気づいたのか!?」  倉井のような悪党がいなくなれば、東武署としても安泰だ。    東武警察署署長室 「巻嶋ごときに何を手こずっている!」  長嶺署長はモニターを見ながら吠えた。  監視カメラはパン屋での銃撃戦を捉えていた。 『市長になりたいのなら、悪党どもを何とかしてください!』  副市長の小椋から命令された。弱冠36歳、親は厚生省の役人だ。 「フンッ、偉そうに」 『市長になる条件はただ1つ、宇都宮から罪人を5人駆逐しなさい』  残り5人      
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