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潜入捜査
光浦を射殺したのは瀧口だった。
使われた拳銃はコルトガバメントだ。
変態を倒してくれた瀧口が、スーパーヒーローに思えた。桜は瀧口の胸に飛び込んだ。
「臭いとか、塩味デブとか言ってごめんね?」
「いやぁ、豚呼ばわりされるのは慣れてるから」
桜は瀧口の唇に口づけた。
トイレだし、死体は転がってるし、最悪なシチュエーションだ。それでも恋はとめられない。
光浦は東武市内で教師をしていた。市議会議員とも繋がりのある顔の広い男だ。
権力を利用して、女子生徒に猥褻な行為を繰り返していた。迷惑な存在だ。
瀧口は東武警察署から、北枕に派遣された。
「こいつが死んだことで救われる奴が何十人もいる。東武市はゴミみたいな街だよ」
瀧口は言った。
津田真喜雄の死体は、奥多摩にあるスクラップ工場で見つかった。死体はバラバラにされていた。
光浦同様、津田も宇都宮出身だった。
桜は津田の旧友に取材を行った。笠原幸夫、証券マンだ。宇都宮駅の中にあるカフェ、《murder》でおちあった。
店内は薄暗く、金田一少年の事件簿のサウンドトラックが流れている。鬱々とした気分になる。
壁にはジェイソンの仮面が飾られている。
「懐かしいですね?墓場島殺人はおどろおどろしかったですよね?」
桜は椅子に腰掛ける。ボイスレコーダーの入ったポーチを足下に置く。スイッチはオンにしてある。
「いや、それは見てないけど雪夜叉はユニークだったな。あのスペシャルドラマのときに地震があったんだよ。最後のシーンに銀狼が出るんだよ」
よく喋る男だな?そう、桜は思った。
津田の詳しい情報を得るため、桜はビールをご馳走してやった。勿論、自腹だ。
「ゴミにはふさわしい死に場所ですよ」
笠原はジョッキ生をゴクゴク飲み、ゲップをする。よほど、酒が好きなのだな。
「こいつのせいで被害に遭ってる仲間がたくさんある。暴力が好きな奴でね?津田のせいで意識不明にされた人もいるらしい。死んでくれて良かった」
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