潜入捜査

1/1
前へ
/14ページ
次へ

潜入捜査

 光浦を射殺したのは瀧口だった。  使われた拳銃はコルトガバメントだ。  変態を倒してくれた瀧口が、スーパーヒーローに思えた。桜は瀧口の胸に飛び込んだ。 「臭いとか、塩味デブとか言ってごめんね?」 「いやぁ、豚呼ばわりされるのは慣れてるから」  桜は瀧口の唇に口づけた。  トイレだし、死体は転がってるし、最悪なシチュエーションだ。それでも恋はとめられない。    光浦は東武市内で教師をしていた。市議会議員とも繋がりのある顔の広い男だ。  権力を利用して、女子生徒に猥褻な行為を繰り返していた。迷惑な存在だ。  瀧口は東武警察署から、北枕に派遣された。 「こいつが死んだことで救われる奴が何十人もいる。東武市はゴミみたいな街だよ」  瀧口は言った。  津田真喜雄の死体は、奥多摩にあるスクラップ工場で見つかった。死体はバラバラにされていた。  光浦同様、津田も宇都宮出身だった。  桜は津田の旧友に取材を行った。笠原幸夫、証券マンだ。宇都宮駅の中にあるカフェ、《murder》でおちあった。   店内は薄暗く、金田一少年の事件簿のサウンドトラックが流れている。鬱々とした気分になる。  壁にはジェイソンの仮面が飾られている。 「懐かしいですね?墓場島殺人はおどろおどろしかったですよね?」  桜は椅子に腰掛ける。ボイスレコーダーの入ったポーチを足下に置く。スイッチはオンにしてある。 「いや、それは見てないけど雪夜叉はユニークだったな。あのスペシャルドラマのときに地震があったんだよ。最後のシーンに銀狼が出るんだよ」  よく喋る男だな?そう、桜は思った。  津田の詳しい情報を得るため、桜はビールをご馳走してやった。勿論、自腹だ。 「ゴミにはふさわしい死に場所ですよ」  笠原はジョッキ生をゴクゴク飲み、ゲップをする。よほど、酒が好きなのだな。 「こいつのせいで被害に遭ってる仲間がたくさんある。暴力が好きな奴でね?津田のせいで意識不明にされた人もいるらしい。死んでくれて良かった」    
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加