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ほんの少しの気まぐれからだった。
そして僕は音をたてないようにそっとドアを開けて廊下に出る。
しんと静まり返った廊下は暗く、窓からの月明かりが廊下を照らしている。
修学旅行で田舎に行った時、灯りが無いために周りは暗いけれど星が凄く良く見えたのを思い出す。
ただ残念な事にここは異世界とはいえ、近くに住宅街のある町である。
離れた場所に街灯がぽつぽつ点いていて、地上を明るく照らしている。
けれどそこから少し離れた場所にこのお屋敷があるせいか、その町の灯りは遠く、月と星明かりが酷く静かに、冴えた白い光を降り注いでいる。
「こんなに静かで明るい様な暗い様な夜。そうか、空は今日は雲があまりないから明るく感じるのかな?」
僕はそう呟きながら歩きだす。
聞こえるのは僕の小さな廊下を歩く足音のみ。
怖い、と思うよりも、まるで何かに呼ばれるように僕は歩いていたので特に怖さを感じなかった。
と、そこで僕は何か白い靄の様な物を見かける。
幽霊かなと思った。でも、
「ミリアを見ると怖くもなんともないかな」
あの明るくて、元気のいい幽霊を思い出しながら僕は、更にその白いそれを追いかけていく。
その白い靄の様な物は階段を下りて行って、それから又廊下に向かい更に階段を下りていく。
やがてドアの前をすうっと透けて、通り抜けてしまったので僕はドアをこっそり開けた。
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