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「リゼルがずっと武器をうっとり見ているので、私も飽きてしまったので」
「……まあいい、それでイズミ、僕に何のようだ?」
「実は欲しい材料があるんだ」
材料と聞いて、リゼルが首を傾げる。
「また何かを作ろうとしているのか? 今度は何だ?」
「ここの子供達が、ここの隣で洋服屋を営んでいるここの奥さんのドレスを破っちゃったんだ。でも納品日が差し迫っていて……」
「それで何か良い物を作ろうとしていると。……こういう時は、クロウも神様の息子だから材料を出して貰えばいいんじゃないのか?」
「いや、クロウはさっき力を神様に封じられて……あれ、もしかしてクロウってどんな素材でも出せたりするの?」
「あー、いや、気のせいだったかも? 本当はやらないよう言われていたからこっそりだったし」
「そうなんだ」
「うん、クエストの関係上ね……こっそり“ずる”をしていたのだけれど、これからはその手が使えなくなるのかな……あ、クロウ」
そこで気づけば僕の後ろにクロウが立っていた。
なのですぐさまお願いをしてみる。
「クロウ、素材を作り出せるって聞いたけれど」
「……リゼル、話したのか?」
「う、ごめん、つい……」
「こっちの手札はあまりあのジジイに知られたくなかったのもあるが、下手に俺が介入し過ぎるとクエストが無効になったりするからな」
それでは本末転倒である。
というわけで、僕はリゼルにお願いした。
「“憂鬱の水草”があったら欲しいんだけれど」
「持っているよ。それでその対価をイズミは何で支払ってくれるの?」
「……もう僕はチートで、リゼルが欲しい物を作ってあげません」
「……もう、仕方がないな。ほら」
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