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突然ですが、僕は見知らぬ男の人に馬車に引きずり込まれました。
リゼルも一緒です。
何故、どうしてと僕が思っていると、その男性が、
「リゼルと可愛い子がいたからつい、二人とも引きずり込んでしまったよ」
朗らかに笑う男性。
多分僕達と同じくらいの歳だろう、薄紫色の髪に緑色の瞳をした美形で、僕よりも背が高い。
クロウと大体同じくらいだな、悔しい気がすると僕が思っているとそこでリゼルが、
「何でメノウがここにいるんだ?」
「いや、従兄の家に遊びに来ていたのだよ。ついでに、ちょっと特殊な薬草の種が欲しくてここに来たわけだ」
「薬草の種?」
「ああ、“赤釣鐘の草”って知っているか? 夜になると赤く輝くらしいんだが……」
「名前は聞いた事がある。突然変異した花だったな。普段は普通の白い“釣鐘の草”という草にしか見えないのだけれど、夜になると光るとか確か、10000分の一の確率で咲く花だったな」
「その花の種から育てた花をかけ合わせていくと、ほぼ確実に“赤釣鐘の草”になる。それがこの貴族、ポロア伯爵の商品の一つだ。この“赤釣鐘の草”は、治癒能力を上げて風邪を治す、いわば強力な風邪薬として重宝している んだ。とはいえ、天然物はもっと強力ではあるらしいけれど、“赤釣鐘の草”は僕達だけではなくて動物や魔物も狙っているから中々手に入りにくいんだよね」
「だから栽培して増やしている、と聞いたが……それ、手紙でも送れば送ってくれるのでは?」
「そうだね」
「……何故伯爵の所に?」
「暇だったから遊びに」
「……」
「そしたらリゼルがいたから、さらって来てやった。シオンのやつが苛立つだろうな~、楽しみだな~」
そのメノウと言われた男は楽しそうに笑う。
どうやらシオンと仲が悪いらしい。
でも、だとすると、
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