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その時、桜舞い散る校舎の裏で、泣きじゃくる彼女を前に俺はただ困惑していた。
『ほんとは達也くんの事、ずっと好きだった……』
『……うん、俺もだよ』
『ねえ、約束しない? 15年後にお互いひとりだったら結婚するの。絶対よ』
思春期にありがちな、たわいもない約束。
確かに、あれから15年。
「で、達也くんは、まだひとりなのかな?」
「いや、1ヶ月後に結婚するよ」
「え、本当に! 私も1ヶ月後に結婚するの!」
それは奇妙な偶然だった。
「そりゃ良かった、おめでとう!」
「そっちこそ、おめでとう!」
「……」
「……」
なんだろう、このもやもやした気持ちは。
「……ねえ」
「なに?」
「私たち、一度会うべきだと思うの。お互い結婚する前に。あの時の私たちの気持ちを、そのまま置いては結婚できないと思うの」
俺は、なぜだかその通りだ、と納得した。
「わかった。じゃあ会おう。今、どこ住んでるの?」
驚くべき事に、彼女は隣駅に住んでいた。
こんなそばにいたなんて。
もしも1年前に再会していたら……。
「ちょうど、1年前にも電話したんだよ」
「本当に?」
「でも、繋がらなかった。その日何度か、かけたんだけど」
1年前といえば、愛美と知り合った日だ。
合コンで隣の席に座った愛美がワイングラスをひっくり返して、テーブルの上に置いてあった俺のスマホが瞬時に破壊された。
弁償しますって健気に頭を下げ続ける愛美を見て、ああ、それが付き合うキッカケになったんだっけか。
「じゃあさ、いきなりだけど、明日の19時はどう?」
「いいよ。空いてる。会おうよ」
話はトントン拍子に進み、俺と沙也は15年ぶりに会う事になったんだ。
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