マリッジブルー

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翌日は、朝からそわそわしていて、なんだか仕事に身が入らなかった。 沙也は今でも綺麗なんだろうか。 歳を重ねて、想像を越えて美しくなっていたらどうしよう。 いやいや、俺には愛美がいる。沙也も結婚するって言ってたし、変な気を起こすのはやめよう。 18時の終業のベルが鳴り、帰り支度をしてると、課長が血相を変えて近寄って来た。 「神条君。明日クライアントに提出する見積りなんだが、担当の高木君が大きな計算ミスをしてたんだ。彼は体調不良で帰ってしまったんで、悪いがこれから対応してくれないか」 「え、いや今日は用事がありまして」 「頼むよ神条君。わかるのは君しかいないんだ」 切羽詰まって爆発寸前の課長に、それでも断りを入れる事は、しがない普通のサラリーマンにできるはずもない。 俺はしぶしぶ沙也に電話した。 「そうか……。じゃあ、しょうがないね」 「本当にごめん。明日はどう? 同じ時間で」 翌日。 待ち合わせ場所へ向う電車に乗っていると、ふいにがたんと停車した。 『えー。ただ今、本線におきまして架線が切れたとの連絡がありました。お急ぎのお客様には大変ご迷惑をお掛けしますが、復旧までそのままお待ち頂けますようお願い致します』 その日は結局、3時間車内に拘束された。 「明日こそ!」 「わかった!」 今度は、春の嵐だった。 バケツをひっくり返したような大雨が降り、風速は20mを越えた。 浸水やら倒壊やら街はパニック状態で、とても会える状況ではなかった。 なんなんだ。 何かが、俺たちの再会を阻んでいるとしか思えない。
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