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いやいやいやいや。
ちょっと、待ってくれ。
混乱して、頭の中が真っ白だ。
「教えてあげる。私とあなたは結婚する運命なの。いや結婚しなければならない。そうしないと、世界が変わってしまう」
「世界が変わる?」
「そう。結婚しないと、時間軸の微妙なバランスが崩れて28年後に世界は崩壊する。これは決まったことなの」
「は?」
「さあ、みんな待ってる。一緒に式場へ行きましょう。その前に……」
呆然と佇む俺に、沙也がそっと唇を寄せた、その時。
「ちょっと待ちなさい!」
沙也の背後で、腰に手を当てて仁王立ちする、これまたウエディングドレス姿の愛美。
「……迂闊だった。これまでずっと力を使って、会うのを阻止してきたのに。まさか結婚式当日に姿を現すとはね」
「ま、愛美? 何を言っているんだ」
「達也、この女、いやこの悪魔の言う事を聞いちゃ駄目。全てデタラメよ。あなたは私と結婚しないと、世界が28年後に崩壊するんだから」
「嘘。私の言う事が本当よ。邪魔しないで」
口を歪めて微笑んだ沙也の白いウエディングドレスが、みるみるうちに黒へと変化する。
髪はふわりと天に向って立ち上る。
対する愛美も、背中からにょきりと白く大きな翼が広がり、目は金色に輝きを放つ。
空は突然かき曇り、激しい雷鳴が轟き、大粒の雨があっという間にこの世界を水浸しにする。
こ、これは……
いったいぜんたい、何なんだ?
「達也、私と結婚するわよね!」
「達也、15年前の約束は絶対だからね!」
頼む、教えてくれ。
俺は、どうすればいいんだ。
誰か助けてくれ。
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