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八月十日
妖精さんが窓の外をぼんやりと眺めている。
外へ出たいのかと聞いたら、こくんと頷いた。だから一緒にお出かけした。
バスケットにはサンドイッチとクッキー、飲み物はオレンジジュース。そして妖精さんが入っている。どこへ行きたい、と聞いてもにこにこ笑顔が返事の代わり。
さて、どこへ行こう。裏山がいい。あそこなら人気(ひとけ)もないだろう。
というわけで裏山。なにを隠そう、ここは妖精さんを保護した場所だ。なので、外へ出してやる。
妖精さんはわたしにまとわりついてきた。
脱走する気はナッシング。うれしい気持ちのまま、一緒にごはんを食べた。
ずっと一緒にいようね。そう声をかけると、妖精さんは腕輪をキッキッと鳴らした。
この小さくて片羽の生き物がこんなにも愛おしい、夏の午後。なんて。
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