八月二十二日

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八月二十二日

 目が覚めた。妖精さんの具合は、と。  あまりよくはないようだ。  妖精さんが寝がえりを打った拍子に背中が目に入った。  いつもの、あの片羽がよく見えた。  羽の付け根の部分に白いものが付着している。ホコリ、とかではない。なんだかカビみたいな。  カビ。白カビの生えた葉は間引かなくてはならない。そのままにしておくと無駄に栄養がいってしまうから。  妖精さんの元気がない。役に立たない片羽に余計な栄養がいってしまっているから。  だったら。  わたしは妖精さんを手に取った。妖精さんのかわいらしい体には相応しくない片羽。  小さな悲鳴のような音が聞こえた。  玉虫色のその羽は、単独で見るととてもきれいだった。
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