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八月四日
その日。キッキッという奇妙な音で目を覚ました。鳥かごに目をやると、妖精さんが飛び跳ねていた。思わず安堵の息がもれる。元気になってくれてなにより。
あらためて聞くと、キッキッという音の出所は妖精さんだった。両腕につけた腕輪をこすりあわせるようにして鳴らしている。きらびやかな花の文様が彫られた小さな銀の腕輪。
妖精さん、と呼ぶと、こっちを向いて笑顔を見せてくれた。そして、
キッキッ。
狭い鳥かごから出して両手に乗せてみる。
最初はおっかなびっくりだったものの、すぐに慣れ、わたしの手で遊びはじめた。
手の平でごろごろ転がったり、指をチョンと突いてみたり。妖精さんの腕はか細く、わたしの指と同じくらいのサイズだ。かわいい。
人差し指の腹で妖精さんの頭を撫でり。笑顔で腕輪をこすりあわせている。どうやら、キッキッは喜びを表現している模様。
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