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ミネラルウォーターを口に運んで、秋良は口を尖らせた。
今日用意されたワインは、秋良も仕事柄もちろん知っているもので、ぜひ口にしてみたい逸品だった。
男達三人は適度に杯を交わしている中、宗像はひとりだけ度を超した飲み方をしていた。
最初は陽気に機嫌良かった。が、途中で秋良が心配するぐらいの量になり、乗務中であれば酒量を調節するレベルになったと思った時はすでに遅く、すっかり彼はできあがっていた。
「おいおい、お前、弱くなったな」と田中は呆れた声を出す。
「そろそろお開きにしようか」と蛯名も席を立つ。
「そうだな」と慎一郎も腰を浮かすと「まだまだ、これからあー!」と宗像は気炎を吐いた。
「バカか。お開きったらお開きなんだよ」
「ろーして」
「ほら、呂律回らなくなってる、帰るぞ、ヨッパライ」
「酔ってねーっつの」
「酔ってる奴ほどそう言うんだよ!」
どうする、こいつ? と田中は宗像の肩を持ち、蛯名は会計に向かった。
「あきら、ちゃんっ!」宗像は大きな声で言った。
「はい?」
「あきら、さん」
「はい」
にかーっと宗像は好相を崩す。
「いいなあー、呼べば返事してくれる。知ってた? 俺ァね、君のこと憧れてたの、大―好きだったの!」
はい、とも何とも答えられない。
「いいよ、秋良ちゃん、まともに相手しないで。ほらー、出るぞ!」
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