第1章

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「私が請け負う」 「お前が?」 「宗像の仮住まいを知っているのは私だけだから」 「ああ、でも教えてくれれば後はやっとくし」 「うん、いや、やっぱり私が行こう」 田中を押しのけ、後部座席に座ってドアを閉めた彼はパワーウィンドウをスライドさせて秋良に言った。 「後で電話する。田中、車をもう一台都合つけて……」 「行きます」秋良は言う。「私もご一緒します」 有無を言わせず、彼女は前のドアを開けて座り込んだ。 「その方がいい。婚約者を真夜中に放置したって聞かされたら、宗像、烈火の如く怒るか、奈落にたたき落とされたように落ち込むだろ」 「しかし……」 時計はタクシーの深夜料金の時間帯にさしかかっている。慎一郎はそのことを気にするように腕時計を指して示した。秋良は頷き返した。 「早く送り届けましょ。奥様も心配してますわ」 「じゃ、後頼んだよ」 俺ら飲み直すからー、と二人の男は手を上げて二歩三歩内路に下がる。 「どちらへ向かいます?」と運転手が問う。 「お住まいはどちらですの?」と秋良も促した。 こうなれば仕方がない。慎一郎は宗像が滞在するレジデンツを伝えた。車はゆるやかに目的地さして発進した。
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