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あたたかい。あたたかいね。
そうだね。
やっとふたり、ひとつになれた。
うん。
私ね、ずっとみなみとこうして一つになりたかったの。
女の子と女の子が一つになんてなれないのに、ずっと夢みてた。
気付かなくて、ごめんね。優香。
ううん、私、願いがかなって、幸せだよ。
だって、こうしてみなみと一つになれたんだもの。
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「お兄さんは、この店が見えるんだね?」
冬馬は、露店の中で唯一薄暗い、真っ白な卵が所狭しと並んだ店先に立っていた。
一年前に優香とみなみが死んでからはしばらく落ち込んだが、ようやく立ち直ることが出来た。
三人でこの祭りに来たこともあったっけ。そう思い出に耽って歩いていてふと足を止めたのがこの店だ。
「お兄さんは、第四の色を見ることが出来る瞳を持ってると見受けた。」
その男なのか女なのか、若いのか老いてるのかわからない店主はニヤリと笑い不思議なことを言う。
「第四の色?」
「そうさ。この店は、人間の見ることのできる色、赤、青、黄色以外の色で出来ている。かく言う、アタシもね?」
冬馬がぼんやりとしていると、店主は卵を手渡してきた。その卵だけは、他の卵と違い、より白く輝いていた。
卵の中から、二つの色が透けて見える。黄身だろうか。あたたかく柔らかな光に魅了された。
「珍しいね。卵がアンタを呼んでいるみたいだ。夜の卵だよ。持ってお行き。」
「夜の卵?」
「そうさ。願いが叶う卵だよ。御代はいらないよ。ただし、タダではないけどね。」
店主は不気味に笑った。
「冬馬、私達とひとつになろう?」
卵が囁いたような気がした。
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