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期待で胸が痛いほど、ドキドキしている。
「あのさ、この前、優香から、好きな人いる?って聞かれたんだ。」
心臓が鼓動を増し、耳が赤くなるのを覚えた。そうだ、それは私が優香に頼んだから。
「だから、俺、言ったんだ。」
そう言えば、優香、はぐらかされたって言ったっけ。
「俺が好きなのは、お前だって。」
えっ?お前って。
私が理解できないでいると、
「俺、優香に告白した。」
私の目の前の冬馬が突然遠くに引いて見えた。今なんて言った?
私が言葉を発せないのを不思議な面持ちで冬馬が見ていたので、初めて自分がぼんやりしていたのに気付いて慌てて言葉をつないだ。
「へ、へえ~、そうだったんだ。で、優香はなんて言ったの?」
そこで冬馬は唇をかみ締めて言った。
「振られた。好きなやつ、居るらしい。」
優香、私に何も言ってくれなかった。優香が嘘をついた。
「そうなんだ。」
優香は優香なりに、私を気遣って冬馬にも嘘をついたのだろう。
優香から好きな男の子の話なんて聞いたことがない。
「なあ、優香の好きなやつって、誰か知ってるか?」
逆に冬馬から、私が聞かれる立場になってしまった。
「ううん、知らない。」
「本当か?お前ら、仲がいいから知ってるのかと思ってた。俺、本当はずっと優香が好きだった。でも、ずっと言い出せなくて。そうこうしているうちに、どんどん他の女の子が近寄ってきて。俺は、どの子とも何となく付き合ったから、すぐに別れた。女はそういうの、敏感だからな。」
冬馬の口からそんな言葉、聞きたくないよ。私は涙が溢れそうになるのを必死で堪えた。
「そろそろ、気持ちにケリをつけて、今度こそちゃんと告白しようと思った矢先に、あいつのほうから好きな人いるかって聞くから、俺はチャンスだと思って思い切って告白したんだ。」
冬馬の独白にみなみはうつむいて聞いていたら、悲しみがだんだんと憎しみに変わっていった。
優香が私に、嘘をついた。
私は、耐え切れず、駆け出した。
「あ、おい、待てよ。どうしたんだよ!」
冬馬の声を無視して走り出した頃には、涙がもう零れ落ちていた。
許せない。優香。
私がどれだけ、冬馬のことをずっと好きだったか知ってるくせに。
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