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みなみが泣きながら走っていると、優香が呼び止めた。
「どうしたの?みなみ。」
心配顔で、後ろから問いかけている。
みなみは、涙でぐしゃぐしゃになった顔で優香を睨みつける。
「私は、さぞ滑稽なピエロだったでしょうねえ。本当は振られてるって知ってたくせに。
どうして嘘をついたの?」
それを聞くと、優香は青ざめた。
「ごめんなさい。でも、みなみがずっと冬馬を好きだった気持ちを知ってたからこそ、言えなかった。」
「いい子ぶらないでよね。本当は、私のこと、あざ笑ってたんでしょう?」
「そんなわけないじゃん!友達だもの!」
「嘘ッ!冬馬から告白されて、まんざらでもなかったんじゃあないの?」
「違うっ!」
「本当に優香は昔っからいい子ぶりっこだよね。私を哀れんで、好きな人がいないくせに、好きな人が居るフリをしてくれたんでしょう?友情に涙がでちゃうわよ。」
みなみは皮肉たっぷりに優香を揶揄した。
「本当だよ。好きな人はいるよ。黙ってただけだもん。」
「私がちゃんと冬馬のことを好きなことを、優香だけに教えたのに?
優香は、自分の好きな人の事は私に言わないんだね。所詮優香にとって、私ってその程度のものよね?」
「違う!違う!」
とうとう優香も大粒の涙を流し始めた。
「もうたくさん。二度と話しかけてこないで。」
そう捨て台詞を残し、みなみは優香をその場に残して去った。
その日から、みなみは優香を徹底的に無視した。
何度か優香からラインや電話が入ったが、それも全て無視して、とうとう携帯からも優香を消した。
別のクラスだったのが救いだった。
優香が嘘をついたことが許せないのか、冬馬が優香を選んだことが許せないのか。
みなみは、そんな自分にも嫌気が差していた。
もう、死にたい。
優香が悪くないことなんて、わかってる。
でも、もう今更優香と仲直りなんて無理。
学校の帰り道、あたりはすでに暗く、河川敷には賑やかな屋台の灯りが煌々と川を照らしていた。
そっか。今日はお祭りの日だったんだっけ。
毎年お祭りには優香と出掛けたな。今年も本当なら、優香とおそろいの浴衣出かける予定だった。
胸に寂しさが押し寄せてくる。
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