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みなみは家に帰ると、サインペンを机の引き出しから出し、卵に優香のフルネームと生年月日を書いた。
そして、上の部分に小さな穴を開ける。
その卵を、庭の土の中に埋めた。腐っていくうちに、その名前を書いた相手が病に侵されるというのだ。
私の苦しみを知りなさい、優香。
若干の罪悪感はあったが、みなみはあの冬馬の思いつめた顔を思い出し、冬馬を苦しめたことすら優香の所為にして、優香を憎んだ。
ところが、その翌日、みなみは突然の出来事に愕然とする。優香が昨日、自殺したというのだ。呪いがこんなに早く効くとも思わなかったし、優香を殺したいとまでは思わなかった。ただ、病気になればいい、程度にしか思っていなかったのだ。しかも、優香が死亡推定時刻は昨日の夕暮れ。つまりは、みなみがあの怪しげな店で卵を手にする前である。みなみは、酷く動揺した。
私の、所為だ。優香を私が、追い詰めた。
みなみは、後悔して泣いた。
ごめん、ごめんね、優香。
その日から、みなみは床に伏せてしまった。原因不明の高熱が続き、ついに入院し、原因がわからぬまま、見る見る衰弱してしまったのだ。卵を庭に埋めた日から21日目の夜。みなみの意識は暗闇へと深く吸い込まれて行った。卵の穴から、闇がうずまき、みなみを飲み込んで行ったのだ。
ああ、呪いが自分にかかってしまったのだなあ。混沌とした意識の中でみなみは夢をみていた。
優香が手招いている。
待って、今からそこに行くから。
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