第1章

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まだ気温の高い9月の初め頃、幹哉たちの勤める会社「伊藤製薬」に新入社員が入って来るという知らせを社長ーー小林 真斗(こばやし まさと)から聞いた。というのは、彼が会社の者全員に放送で伝えたのだ。そして今日の朝会で、その新入社員を会社の者全員の前で紹介することになった。全員が会社に集まると、真斗は「皆、静粛に。」と指示を出した。すると、会社員たちは話すのをやめ、先程から何故かざわざわしていた空気になっていたのがなくなった。全員が真斗の方を向いた。真斗の隣には、小柄で、橙色の肌に、黒くて大きな瞳に、マスカラを塗ったかのような濃く長いまつ毛と、艶のある膝の後ろまであるウェーブのかかった長い黒髪が特徴的な美女が立っていた。彼女が居ることが、先ほどまで周りがざわついていた原因だった。何故なら、昨日までこの会社に彼女はいなくて、彼女の存在を知る者は誰も居ないからだ。
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