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「ねー、タカちゃーん」
「ん?」
放課後の指導室、亜矢の答案の添削をしていると、平坦な猫なで声で俺に呼びかけた。
「つまんなーい。どっか遊びにいこーよ」
「バカ、もう少しだから待ってろ。それに先生と呼びなさい」
「はーい」
やる気のない生返事をして、足をぷらぷらさせる亜矢。まぁ年頃の女の子だ、教育熱心な担任といるよりは友達と遊ぶ方が良いに決まっている。
でも俺は亜矢に素敵な人生を歩んで欲しいからこそ、こうして補習授業を行っているわけで、ここは我慢してもらわないと。
「よし、添削終わったぞ…って、おい」
「ん?」
俯いていた亜矢は顔を上げて俺を見る。
純粋無垢なその瞳は少女独特の澄んだ輝きを放っていた。
「モビーで遊ぶな!」
「えー。だって暇なんだもん」
モビーとはモバイルフォンのこと。専用の腕輪のスイッチを押すと掌にホログラム画面が浮かび、指でなぞったり声で指示するとメールや電話やアプリなどを使用できる。
ちなみに俺はいまだにスマホを利用していて、ガラスマ世代とか言われている。
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