Bye-me-tender

3/26
前へ
/26ページ
次へ
「ねー、タカちゃーん」 「ん?」 放課後の指導室、亜矢の答案の添削をしていると、平坦な猫なで声で俺に呼びかけた。 「つまんなーい。どっか遊びにいこーよ」 「バカ、もう少しだから待ってろ。それに先生と呼びなさい」 「はーい」 やる気のない生返事をして、足をぷらぷらさせる亜矢。まぁ年頃の女の子だ、教育熱心な担任といるよりは友達と遊ぶ方が良いに決まっている。 でも俺は亜矢に素敵な人生を歩んで欲しいからこそ、こうして補習授業を行っているわけで、ここは我慢してもらわないと。 「よし、添削終わったぞ…って、おい」 「ん?」 俯いていた亜矢は顔を上げて俺を見る。 純粋無垢なその瞳は少女独特の澄んだ輝きを放っていた。 「モビーで遊ぶな!」 「えー。だって暇なんだもん」 モビーとはモバイルフォンのこと。専用の腕輪のスイッチを押すと掌にホログラム画面が浮かび、指でなぞったり声で指示するとメールや電話やアプリなどを使用できる。 ちなみに俺はいまだにスマホを利用していて、ガラスマ世代とか言われている。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加