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でもまだだめよ
本当はこのイケメン君と今からいちゃラブしたいけど私は主人公なんだからここは我慢するのよ
「や、やめて下さいっ」
密着する彼の体を両手を使って突き放すと先程まで重ねあってた私たちの唇も離れる
突き放された彼は、どうやら私が突き放したときに唇を噛んでしまったらしく、下唇から流血するほどではないが血が滲むのが見えた
それを拭うように彼は下唇をぺろりと舐める
ちょっと力が強すぎたかな?
「あ、あの。大丈夫?」
力を入れすぎたことに反省しつつ、鞄から取り出したピンクのハンカチを彼に差し出すと彼は再び口角がニヤリと上がる
「はは…突き飛ばしたのはあんただろ?いい度胸じゃねぇか」
「だってそれはあなたがいきなり…!」
彼はハンカチを持った私の手首を強く引っ張る。そのせいで私は少し背伸びをした状態で彼を見つめた
「もう一度、俺にキスしてくれたら許してやるよ」
あぁ、イケメン君の顔が近い!近い!近い!
このままもう一度キスしたい
彼に私の全てを差し上げてもいい
だけど、今はまだだめ
私は唇をぎゅっと噛み締めて勢いよく掴まれた手を振りほどく
「ばか!最低っ」
私は捨て台詞を吐きながら猛ダッシュでその場を立ち去った
もちろん、ハンカチをその場に残して
はぁ、彼かっこよかったなぁ
今日、ハンカチに香水つけてよかった
やっぱり女は匂いで存在を伝えなきゃいけないよね
「あ!念のため保険をかけておこう」
きっと私はイケメン君とどこかで再会する
でも、未来は絶対じゃないから保険をかけておかないと
駆け足で学校へと向かいながら鞄から1枚の食パンを出し、口にくわえながら走る
ちょっと典型的すぎるけど念のためね
これをやるのはもう28回目だけどやはり慣れない
食パンを食べながら走るなんて喉が詰まりそうだわ
主人公も大変だなぁ
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