第1章

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「学校としても、子どもたちが教室でご飯っていうの、ありがたいんじゃないかしら。」 ほら、午後の連絡もしやすいし、それより昨今は、不審者の心配もないし。 運動会、これだけ大勢人が出入りしていると、どんな人間が紛れ込んでいるか分からないってことか。 なんて世の中だ、子どもが一生懸命競技しているのに、そんなことにまで気を使わないといけないなんて。 妻と二人だけの弁当は、娘が食べているものとそう変わらないはずなのに、どことなく味気ないものになってしまったようで、無口になったまま食べ終わったあと、少し後悔した。 平日よりさらに早起きして作っていた妻に、申し訳ないということに気づいたからだ。 それでも、何となく言い出せなくて、そのまま娘の午後の種目を見た。 結局、娘の赤組は、僅差で白組に負けてしまった。
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