12  何してくれるんだ、もぉ! (続き)

2/23
前へ
/38ページ
次へ
案外、あっさりと引いた残暑のお蔭で、 久しぶりの故郷には、淡い秋風が吹いていた。 そして、懐かしい駅舎を彼女と一緒に出て行くと、見慣れた車が目に入る。 「あっ、つぐみちゃん!」 たぶん、昨日の内に帰省したのだろう。 車の助手席から降りてきた妹が、大きな笑顔で手を振ってくる。 そして、 「沙耶佳ちゃん」 いつの間にか互いに「ちゃん」付けになっていた彼女も、 笑顔で妹に小さく手を振り返す。 しかし、この光景を目にする俺の胸には、 秋風というより木枯らしに近いものが吹き抜けた。 なんだ、このすごい置き去り感とズッシリした嫌な予感。 そして俺は、襲われそうな身震いをなんとか引っ込め、 ひっそりと溜息をついた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加