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案外、あっさりと引いた残暑のお蔭で、
久しぶりの故郷には、淡い秋風が吹いていた。
そして、懐かしい駅舎を彼女と一緒に出て行くと、見慣れた車が目に入る。
「あっ、つぐみちゃん!」
たぶん、昨日の内に帰省したのだろう。
車の助手席から降りてきた妹が、大きな笑顔で手を振ってくる。
そして、
「沙耶佳ちゃん」
いつの間にか互いに「ちゃん」付けになっていた彼女も、
笑顔で妹に小さく手を振り返す。
しかし、この光景を目にする俺の胸には、
秋風というより木枯らしに近いものが吹き抜けた。
なんだ、このすごい置き去り感とズッシリした嫌な予感。
そして俺は、襲われそうな身震いをなんとか引っ込め、
ひっそりと溜息をついた。
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