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しかし、そんな俺の様子を運転席から父は見ていたようだ。
「潤平。挨拶は後でいいから、
車貸すから、その辺を案内してあげたらどうだ?」
なぜか妹が紹介した彼女に、短く挨拶をした父がボソリと提案してくる。
もう、父の横顔が仏のように思えた。
「そうだね」
短いが、これで俺たち親子は十分通じる。
そして、萎んだ俺の気持ちに微かな安堵が点った。
だが、当然ながら彼女は困惑したようだ。
「でも、それじゃあ……」
しかし俺は、こんな昼間からアイツらに晒されるのは御免だった。
だから、
「いや、暗くなったら見えなくなっちゃうし……」
まだ夕暮れも、つるべ落としというわけでもないが、
慌てて適当な言い訳を口にする。
それに、
「案内するっていっても大した所なんかないから、すぐに済んじゃうよ」
妹からまで変な促しもあり、彼女は、困惑しつつも納得してくれた。
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