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こうして、取りあえず実家近くで父と妹を降ろし、
とにかく実家から離れたい一心で、俺は、そそくさと運転席に滑り込む。
しかし、
「あの、ここまで来たんですから、やっぱり……」
おずおずと助手席に乗り換えてきた彼女が、再び困惑顔になる。
だが俺は、ここはきっぱり言った。
「大丈夫です。気にしないで、行きましょう」
なにしろ、アイツら相手はすごく疲れるから、
あそこに居る時間は短いに限る。
第一、今日ここに来た目的はアイツらに会うことじゃない。
「だってほら、今日は、ここを見る為に
せっかくのお休みに来てくれたんでしょ?」
そんな俺の言葉に、ちょっと考えるように彼女が俯く。
だから、
「それにたぶん、親父が上手くやってくれてると思いますから」
笑顔まで作ってみせる。
それで、ようやく彼女も頷いてくれた。
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