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あたしが中学生の時の話。 山の中を三個下の弟と歩く。 顔は、はっきりと見えないのだけども。 昔に聞いた『のっぺらぼう』みたいに でも顔には靄(もや)みたいなのが かかってて。 「どこに向かってるの?」 弟は答えない。 ずんずん山奥に無言で入っていく。 あたしはなぜだか 「殺されるんだろうな」と思っている。 逃げようとはしなかった。 そのうち沼みたいな大きな水溜まりの 近くに着いた。 『ここだよ』 そういわれた瞬間、場面がくるり。 あたしは 土の中に横たわってた。 いつ掘ったんだろうとか いつ穴に入れられたんだろうとか そんなこと考える前に。 したから見上げると弟が 薄ら笑いを浮かべて大きなシャベルで あたしの上に土をかけていて。 「ああ、生き埋めにされるんだ」と 意外にも冷静に土をかけられながら 思っていた。 最後に見た弟の顔は 口の端だけが歪んでいた。
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