0人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃ、また明日ね」
「うん。美琴ちゃん、また明日ね」
やっと学校の終わった午後。
この先は全然方向が違ってしまうから、美琴ちゃんと一緒に帰れるのはここまで。
うーん。今日の夕飯はどうしようかな?
お豆腐が残ってたから、麻婆豆腐? それとも、今年はこれが最後になるかもしれないから、ゴーヤチャンプルーかな?
そんなことを考えながら帰るなんて、私まるで主婦みたい。でも、そんなものよねぇ。うちには、手のかかるのが3人もいるんだもの。
「はぁ……」
あ~あ。こんなんじゃ、ますます王子様からはほど遠くなっちゃうわよ……。
とかなんとか、グルグルしてるうちに、見えてきたのは、私の家。
今日は、グッチャグッチャになっていないといいんだけどなあ……。
「あれ?」
家の前にいるのって……。
「おい、お前」
あ、やっぱり奏さんだ。
奏さんは、美琴ちゃんのお兄さん。
ずっと子供ができなかったのに、奏と美琴は年子だから、いきなり2人の子持ちになったのよ、って、美琴ちゃんの家のおばさんが言ってた。
美琴ちゃんとは大親友だけど、奏さんとはあまりお話ししたことないのに、どうしたのかしら……。って、奏さんと一緒にいるのって、ユーゴ!?
「お前だろ? 美琴が言ってたこの家の魔物ってのは。どうやってこの世界にやってきた?」
「魔物じゃない……吸血鬼だ……」
「はぐらかす気か?」
「……はぐらかす……?それ、おそばに入れるやつか?」
……ユーゴ、それ、天かすだよ。
「…………」
あ~。奏さん、もしかして怒っちゃったかな?
「もう1回聞くぞ。お前、どうやってこの世界に来たんだ? 魔物は魔界とやらにいるんだろ?」
「……餡子の匂いをたどってたら……着いた……」
……そうだったんだ。ユーゴ、あなたの鼻って、犬並み? はっ! 漫才やってる場合じゃないって!
「……なめた態度とりやがって」
どうしたんだろう? 奏さん、なんだかすごくピリピリしてる。
「あ……今日のおやつはアイスクリームにしよう」
ユ、ユーゴ。あんた、この緊張した時に何言ってるのよ。
「お前、とぼけるのもいい加減にしろ」
「あっ……」
あ~。どうしよう……。奏さん、とうとう本気で怒っちゃったみたい。
「言え。お前はどこから、どうやってこの世界にやってきた?」
最初のコメントを投稿しよう!