第1章

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 「じゃ、また明日ね」  「うん。美琴ちゃん、また明日ね」  やっと学校の終わった午後。  この先は全然方向が違ってしまうから、美琴ちゃんと一緒に帰れるのはここまで。  うーん。今日の夕飯はどうしようかな?  お豆腐が残ってたから、麻婆豆腐? それとも、今年はこれが最後になるかもしれないから、ゴーヤチャンプルーかな?  そんなことを考えながら帰るなんて、私まるで主婦みたい。でも、そんなものよねぇ。うちには、手のかかるのが3人もいるんだもの。  「はぁ……」  あ~あ。こんなんじゃ、ますます王子様からはほど遠くなっちゃうわよ……。  とかなんとか、グルグルしてるうちに、見えてきたのは、私の家。  今日は、グッチャグッチャになっていないといいんだけどなあ……。  「あれ?」  家の前にいるのって……。  「おい、お前」  あ、やっぱり奏さんだ。  奏さんは、美琴ちゃんのお兄さん。  ずっと子供ができなかったのに、奏と美琴は年子だから、いきなり2人の子持ちになったのよ、って、美琴ちゃんの家のおばさんが言ってた。  美琴ちゃんとは大親友だけど、奏さんとはあまりお話ししたことないのに、どうしたのかしら……。って、奏さんと一緒にいるのって、ユーゴ!?  「お前だろ? 美琴が言ってたこの家の魔物ってのは。どうやってこの世界にやってきた?」  「魔物じゃない……吸血鬼だ……」  「はぐらかす気か?」  「……はぐらかす……?それ、おそばに入れるやつか?」  ……ユーゴ、それ、天かすだよ。  「…………」  あ~。奏さん、もしかして怒っちゃったかな?  「もう1回聞くぞ。お前、どうやってこの世界に来たんだ? 魔物は魔界とやらにいるんだろ?」  「……餡子の匂いをたどってたら……着いた……」  ……そうだったんだ。ユーゴ、あなたの鼻って、犬並み? はっ! 漫才やってる場合じゃないって!  「……なめた態度とりやがって」  どうしたんだろう? 奏さん、なんだかすごくピリピリしてる。  「あ……今日のおやつはアイスクリームにしよう」  ユ、ユーゴ。あんた、この緊張した時に何言ってるのよ。  「お前、とぼけるのもいい加減にしろ」  「あっ……」  あ~。どうしよう……。奏さん、とうとう本気で怒っちゃったみたい。  「言え。お前はどこから、どうやってこの世界にやってきた?」
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