0人が本棚に入れています
本棚に追加
「だから……餡子の匂いがして……」
「くそっ!」
どうしたんだろう? 奏さんって、普段は無口で、感情的になったりしない人なのに……。
「あっ!」
「何か思い出したのか?」
「気付いたら、団子屋さんの前だった」
「…………」
奏さん、怒りに震えてる。ヤバイわ、もう限界かも!
「奏さん、待って」
「あ……、かなたさん……」
「帰ってきたのか」
「奏さん、ごめんなさい。ユーゴはちょっと変わってるだけで、悪気があるわけじゃないのよ」
「聞かれていたのか」
うーん。もうすっかりいつもの奏さんよね。
ちょっと何を考えているのかわからなくて怖いけど、でも、冷静で、落ち着いてるもの。
「ごめんなさい。立ち聞きするつもりはなかったんだけど」
「いや。別にいい」
「待ってください」
「なんだ?」
「えっと、もしよかったら、上がってお茶でも飲んでいきませんか?」
せっかく来てくれたんだし、ちょっとぐらいお話してみたいな。美琴ちゃん家ぬ遊びにいっても、挨拶するぐらいであまりお話したことないし。
「お茶より……ジュースがいい」
「ジュースも用意してあげるわ。だから、先に家で待ってて」
「ああ」
いそいそと部屋に帰っていくユーゴの背中に、奏さんがちらっと目をやる。 まだ怒ってるのかな……? 突き刺さりそうな鋭い目付きをしてる。
「奏さんもどうですか?」
「いらん」
「えっと、でも、魔物がどうやってこの世界に来たのか知りたいんですよね? フロリアに聞けばもう少しわかるかもしれません」
「いや、いい」
「そうですか……。奏さんがそう言うんならいいですけど……」
うーん。あんなに切羽詰ってそうだったのに、本当にいいのかな?
「ああ。気にするな」
「えっと、でも、奏さんはどうしてユーゴたちがこっちの世界に来た方法なんか、知りたかったんですか?」
「ちょっとな」
「奏さんも、聖君みたいにエクソシストとかに興味があるんですか?」
もしそうだったら、ちょっと意外な感じ。だけど、じゃあ、何に興味があるかって聞かれたら、よくわからないんだけど……。
「違う」
「そうですか」
「邪魔した」
「あ、はい……」
奏さん、どうしたんだろ? 明日、美琴ちゃんに聞いてみようかな。
最初のコメントを投稿しよう!