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歩いていってしまう奏さんの背中を見送っていたら、いきなり玄関の扉が開いた。
「なあ、お茶にするんだろ? まだ?」
「はいはい。ちょっと待ってよ」
もう。この子たちがいると、ゆっくり考えごとしてる暇もないんだから。
そう思いながら、とりあえず家に帰って、着替えをすることにした。
でも……。
知らなかったな。奏さんでも、あんなに必死になったりするんだ……。
今まで、作り物みたいな無表情でちょっと冷たい感じがしていたけど、奏さんも人間らしいところもあるんだな。
さ~て。そんなことより、うるさい子たちにおやつを用意してやらないと……。
「おやつにするけど、フロリアは、起きてる?」
「起きてるよ。さっき、表が騒々しかったからね。何かあったのかい?」
「うん。ちょっとね。そう言えば、あなたたちどうやって魔界からこっちに来たの?」
前にロイが勢いで、とか言っていたけど、フロリアならちゃんと話してくれそうだよね。
「そんなの、俺様の自慢の鼻で抜け道を発見して、こそっと抜け出してきたに決まってるだろ?」
「抜け道? それって、いけないことなんじゃ」
「平気、平気。バレなきゃいいんだよ」
「50年もこっちにいたら、バレているに決まっているだろう? でも、僕は後悔していないよ。君に出会えたからね、かなた」
あー、こんなに口説かれてると、なんか慣れてきたかも。
「ねえ、普通はどうやってこっちに来るの」
「本来なら、ちゃんと申請をして正式な門を通らないといけないんだろうが……」
「?」
どうしたのかな? ちょっと言いにくそうにしてるけど……。
もしかして3人がこっちの世界にやってきたのって、何か理由があったのかな?
「おやつ……」
「ああ、そうだったわね。はい、今日はこれよ」
ま、理由なんていいか。言いたくないこと、無理に聞いても仕方ないしね。
「おや。今日は苺のゼリーか。君は本当に料理が上手だね、かなた」
「ふふふ。褒めてももう何も出ないわよ」
「やだな。僕がそんな下心があって、君のことを褒めてると思ってるの? 僕はどっかのお子様とは違うよ」
フロリアは、ちらっとロイの方を見てる。
「何が下心がないんだよ。見え見えの下心がありまくりにクセして」
「そうね。ものすごい大人の下心がね」
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