第1章

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 もう、しれっと言いながら肩を抱くなんて、まったく油断も隙もなんだから。  「おやおや。つれないね」  「苺ちょうだい」  「きゃあ」  ちょ、ちょっと、ユーゴ! 苺が欲しいからって、食べかけのを取ろうとするのは止めてよ。  「あ、てめえ。今、どさくさにまぎれて、キスしようとしただろ?」  「…………」  「ユーゴ。お前、絶対わざとだろ。ずるいぞ」  うん。私もロイの意見に賛成。  賛成だけどね、ロイ。抱きつくのはダメよ。  「こら、ロイ。抜け駆けはなしの約束だろう?」  抜け駆けのダメだけど、だからって、対抗して抱き寄せようとするのもね。  「苺……」  うわ~ん。ユーゴ。だから、後ろからいきなり卑怯よ~。  「3人とも……」  「うっ……」  「さて、ユーゴ。僕は甘いものより、甘い唇の方が好きだから、これはお前にやるよ」  「うん。あっちでテレビ見ながら食べてくる」  「俺も、俺も。今やってるアニメ、すっげえ面白いんだよなあ」  あらら。3人とも行っちゃった。  おばあちゃんにもらったペンダントの威力ってすごいのねえ。  「さ~て。みんながおとなしくしてるうちに、家のこと、片付けちゃおっと」  はあ……。  美琴ちゃんのおばさま、私は、ある日いきなり3人の子持ちになった気分です……。  天気が良かったのでふらりと公園に寄ってみたら、奏さんの姿が見えた。  噴水の傍に立って噴水を見つめている。  いつものように誰も寄せ付けないオーラをまとったまま。でも、私はなんだかその姿が妙に気になり、近寄って声をかけることにした。  「こんにちわ、奏さん」  噴水を見つめていた奏さんは、首を少し動かしてちらりと私を見る。  「なんだ、お前か」  「何してたんですか?」  「……お前には関係のないことだ」  奏さんはそう言って噴水の縁に座り込み、また噴水の水面をじっと見つめている。  奏さんはいつも仏頂面だけど、なんだか今日は悩み事があるようなちょっと憂い顔に見える。……どうかしたのかな。  心配になってそのまま帰ることも忍びなく、何も言わずに私もちょっと距離をあけて側に座った。  水面を凝視する奏さんを見つめる。秋風が奏さんの無造作な髪をなでる。  風の合間に奏さんが呟いた。  「人は死んだらどこに行くんだろうか……」  私に問うたわけではない……と思う。
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