第2章

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 「そんな……」  智哉君がすごく私のことを心配してくれたのは知ってたけど、奏さんに直接そんなことまで言ってたんだ。  「奏さんは……これ以上私と付き合っているのは負担ですか?」  そう問いかけたけれど、本当に知りかかったのは奏さんの気持ちじゃなくて、私自身の気持ち。  私は、奏さんと付き合うのがつらいかな?  「……それはお前の方だ」  「私は……」  やっぱり、奏さんと別れたくない。ずっと一緒にいたいよ。でも、それは叶えられない、望みで……。  もすぐ……奏さんの誕生日が来たら、奏さんはいなくなってしまう。そして、私も奏さんのことを忘れてしまう……。  「お前の望むようにすればいい。俺は……もう慣れている」  「慣れている?」  「もう何回となく繰り返してきた。それまでの人生の終わりを迎えることも、人々から忘れられることも。だから、慣れている」  奏さん、そんなに苦しそうな顔してたら、本心から平気だって思ってるわけじゃないって、すぐわかっちゃうのに……。  「どうせ近いうちに忘れてしまう相手だ。お前の望むようにすればいい。何をしても、お前が後悔することなどないのだから」  「そんな言い方しないでください」  そんな投げやりな言い方、悲しすぎる。  「……すまない」  「どうするのが1番いいのか、2人で考えてみませんか?」  そう言ってみたけど、何を考えればいいのかなんてわかってなかった。  「そうだな……」  奏さんの返事を最後に、そのまま沈黙が続く。  空は信じられないほど青いのに、この部屋の空気だけどんより曇り空みたいに重くなっていく。  「…………」  奏さんは押し殺したように溜息をついた。  唇を噛みしめて、自分の足元を見つめている。  そんなつらそうな奏さんを、少しでも楽にしてあげたかった。  何もかもを拒むように強張ってる背中に、手を伸ばしそうになる。だけど、直前で、その手を握り締める。  抱きしめて、慰めてあげたくなる気持ちを必死で押しとどめた。  そうじゃない。  今、しなければならないのは、一時の気休めや同情じゃない。  それはきっと、考えたくないことから逃げよとしてるだけだから……。  私が、この辛さから逃れたいだけだから……。 でも……奏さんがいなくなるなんて、信じたくない。  考えたくないのよ……。  「……私、考えるのが怖いんです」
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