第2章

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 「ありがとうございます! クリスマスイブの日に大学の中で展示会があります。写真、差し上げますから、良かったら来て下さいね」  「はい」  12月24日……その頃には、きっと奏さんはいない。  それでも、私は展示会に行くのかな?  ボールペンで?写真お渡し″と走り書きされたパンフレットを受け取りながら、私はそんなことを思っていた。  「写真、か……」  そう呟いた奏さんが、何を思っていたのか、その時の私にはわからなかった……。  ……  …………  ………………  その日の夕飯の後、フロリアたちと4人でテレビを見ていた時のこと。  「みんな、難しい顔をしてどうしたの?」  「あの男のことに関して、君に話しておきたいことがあって」  「奏さんのこと?」  いつになく真剣なフロリアの表情に、嫌な予感がした。  「そう。君も話を聞いてるみたいだけど、彼は人間じゃない」  「…………」  わかってたことだけど、他人から突きつけられると酷く胸が痛くて、言葉が出てこない。  「もしかして、知らなかったとか言わねーよな?」  「ううん。知ってたわよ」  ロイが一大事って顔をしたから、慌ててそう言ったけど、自分でも悲しくなるぐらい細い声しか出てこなかった。  「よかった。で、彼は自分のことをどこまで知っていたんだい?」  「どこまでって……?」  「多分、なんにもわかってないんじゃねーの。だって、そういうもんだし」  「……何も、わかっていないと思う」  だからこそ、あんなに苦しんでいるんだもの。  「な? 言ったとおりだろ。 ルブランってのはそういうものなんだって」  「ルブラン?」  聞いたことのない言葉だけど、魔物の種類なのかな?  「ルブランっていうのは、自分が死んだことに気付かず、生前の姿のままで、人間界をさまよう魔物のことなんだ」  「死んだ……?」  そんなまさか……。  「死んだことに気づくまで、何度でも、何度でも同じ時間を繰り返すんだ」  「最近……影が薄くなった」  「どういうこと?」  奏さんの影が薄くなったなんて、そんなこと全然気付いてなかった。  「……あの男が死んだ年齢に近づいてきたってことだ。言いにくいけど……」  「……もうすぐ奏さんは消えてしまうってことね」  「お前、知ってたのか?」  やだな。なんでロイたちがそんな悲しいそうな顔をするの?
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