第2章

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 絶望的な響きの言葉が、繰り返される偽りの人生に、奏さんがどれだけ苦しんできたか物語っていた。  「真柴奏となる前にも……何度も思った。だが、この身体は傷一つ作ることが出来ない」  前に奏さんの部屋に遊びに来た時のことを思い出す。  奏さんは、暗がりの中で、何かを確かめるように自分の指を傷つけていた。  「……唯一、俺の身体に何か出来たのは、お前のじいさんの持ち物と……ペンダントだけだった」  奏さんはとても遠くを見るような目をしていた。  「だが……お前のじいさんはもう居ない。そして、お前のペンダントでは、俺を傷つけることは出来ても、それ以上は無理だろう」  「奏さん……」  終わらせませんか?  そう言いかけた言葉が、喉につまる。  やっぱり怖かった。悲しかった。  奏さんに死の宣告をするのは……。  「お前は……何か知っているのか?」  奏さんが必死の表情で私を見つめてくる。  「……はい」  「そうか……」  「もし、奏さんが終わらせたいと思っているのなら……」  ……お話しします。  たったそれだけのことが出てこない。  だから、奏さんは気付いてしまった。私の言おうとしてることが、決して無条件にハッピーエンドを迎えるようなものじゃないと。  「……俺は臆病だな。あれほど終わらせたいと願っていたのに、いざとなると……」  「奏さん……」  私は、ぐいっと奏さんの首を引き寄せた。  「……んっ……い、いきなり何をするんだ……」  驚く奏さん。その切れ長い目が大きく見開かれる。  そう言えば、こんな風に私からキスしたことって無かったっけ。  「キスしたかったから、キスしたんです」  そう言ってにっこりと微笑む。  そう……私が、怖がってり弱気になっちゃダメよ。  私だけは、奏さんの悲しみを支えられるようにならなきゃ。  奏さんが、自分でちゃんと選択出来るように支えてあげないと。  「……私も臆病です。奏さんが終わらせたいって思っていることわかってたのに、奏さんに選ばせてます」  あんなに一生懸命、自分のことを調べていた奏さんが、終わらせたい思っていないわけないのに。  「当然だ。俺のことを俺が決めるのは……」  そう言いかけた唇にもう一度、ちょっと強引にキス。  奏さんに勇気を吹き込むように、私はここにいますと言うように。  「お、お前……」
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