第2章

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 そう言いながら、美琴ちゃんは机の引き出しから別のノートを取り出す。それは、飾りっけのないどこにでも売ってるノートだった。  そのノートに並んでいるのは、今と少しも変わらない奏さんの文字。  「同じこと、調べてる……」  その几帳面な硬い文字がつづってるのは、悲しい自分の出世の証。  「あたしが知ったのは最近だけどね。多分、あたしが調べるちょっと前じゃないかな……」  それっきり、また沈黙が続いた。  「こんな現実見せられたら、切ないよね」  ――まだ目も開かないうちに本当の両親と離れなければならなかった奏さん。でも、その理由はわからずじまい。  ううん、あの特異体質のことで、自分が両親と離れなければならなくなったって思い詰めている可能性もある。  「……奏さん」  その胸にうちはわからないけど、もし自分がそんな立場だったら、きっとそう思う。  「あんた……真っ青だよ」  「……ちょっと胸が苦しくて。家に帰って休んだ方がいいかな……」  「帰れる? あたしのベッドで少し休んでいったら?」  「平気。それに、今、奏さんと顔を合わせたら、どんな顔をしていいのかわからないし」  「そっか……それもそうか……」  「うん。だから、また明日ね」  なんだか胸が苦しくて、私はまるで逃げるように美琴ちゃんの部屋を後にした。  でも、まるで現実から逃げてきたバチが当たったみたいに、玄関の前で奏さんと鉢合わせてしまった。  「奏さん……」  「どうした? お前、顔色が真っ青だが」  「あ、なんでもないんです」  「なんでもないって顔か。一体、あいつと何を話したんだ? 何かひどいことでも言われたのか?」  奏さんが本気で心配してくれている気持ちが、痛いぐらいに突き刺さってくる。  どうしよう……。なんて答えればいいんだろう?  「奏さんのことを話してました」  「俺のこととは?」  「奏さんは……」  「俺は?」  「奏さんはどこから来たんだろうって」  「…………」  私の返事に奏さんは、一瞬息を飲み、そしてふっと顔を曇らせる。  「俺がどこから来たのか、か。それは、俺も知りたいな」  「…………」  今度は私が黙り込む番。  「なんなら一緒に探してみるか?」  でも、思いがけない奏さんの言葉に、胸の奥からほんわかと温かくなってくる。  「奏さんがそうしたいなら」  
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