第2章

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 奏さんを信頼できる人に預けて、行方不明になったって言う、あの。  ……でも、親子でもこんなに似ているものなのだろうか。  背筋がぞくぞくとする……まさか……そんな。  「いや……俺だ」  そんな……うそ……。  「よく見ろ……この耳のところにあるホクロ。写真の中の男にもあるだろう」  そう言って、髪を少しかき上げて見せてくれる。  確かに、写真の中の人と、奏さんには同じ所にホクロがあった。  「……」  もう、納得するしかない。  奏さんにお父さんしかいなかった理由、その人が奏さんを置いて行方不明になった理由。  もう、すべてのパズルのピースがカチリとあった。  「奏さんが……しきりにおじいちゃんやおばあちゃんのことを聞いてきた理由って、このことだったんですね」  「お前のじいさんは、俺の正体に気付いていた。だからこそ、俺を置いてくれたんだと思う」  「おじいちゃんが……」  「そして、人並みの幸せを味わわせたいと、真柴の両親の親戚に預けんたんだ」  「奏さんって……人間じゃないの?」  「そうだ、俺は人間じゃない」  きっぱりと言い切る奏さん。  その瞳は今までで一番暗かった。  「本当は知りたくなかった。やはり、俺はお前に近づく資格なんて無かったんだ」  そう言うと、私の手から写真を奪い背を向ける。  「俺のことは忘れろ」  「嫌です!」  私は、思わず奏さんを追いかけて抱きしめていた。  「奏さんに何か秘密があるっていうことには気がついていました」  「だったら……!」  瞬間、奏さんが顔を歪める。  「別に奏さんが人間であろうが、無かろうが関係ありません! そんなこと、些細なことです!」  「……お前」  「ええ、私にとっては些細なことです! そうやって私のことも否定しようとする奏さんのことの方が問題です!」  「お前の泣く顔を見たくない」  「私は、奏さんのことが大好きです!」  「……」  「奏さんも、私のことを大切に思ってくれているなら……、私の大好きな奏さん自身のことも大切にしてください……」  はらはらと涙が零れる。  「……俺は、人間じゃない。お前のように泣くことも出来ないんだ……」  泣き出した私に、奏さんは困惑したような表情を見せる。  「奏さんの特異体質のことも、泣けないことも初めて知りました」
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