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「どんなに愛し合っている恋人同士でも、永遠に一緒にいられるわけじゃないんですから。いつかは別れてしまうかもしれないし」
?別れる″という言葉に、奏さんが息をのんだ。
「80歳、90歳になれば……ううん。ひょっとした、明日にでも事故で死んでしまうかもしれないし」
奏さんの手を強く握り締める。だけど、奏さんは握り返してくれなかった。
「私ね、恋人が思い病気だって告知された時って、きっとこんな気持ちなんだと思うの」
実感わかなくて、でも、胸の奥に鈍い痛みがあって。
本当はどうすればいいのかわからないけど、どうにかしようって気持ちだけが先走っていて。きっと、恋人の死を宣告された人は、こんな感じなんだと思う。でもね、1つだけわかってることがあるんだ。
「最悪の別れの前に、別れてしまおうって言う人もいると思うけど、私はそんなのは嫌だな」
「お前……」
「一緒にいられる間だけは、忘れちゃっても後悔しないぐらい、たくさんのことをしたい。今だけしかないなら、今、最高に幸せになりたいよ」
「…………」
奏さんの戸惑いがその腕から伝わってきた。
帰り道、私たちは無言で手を繋いで歩いた。
本当はもっと一緒にいたかったけど、もう、分かれ道まできていた。
「……じゃあな」
奏さんが当たり前のように離れていく。
「奏さん! 私、明日も奏さんを迎えに行きますからね!」
それに返事はなかった。
「……奏さんのことを忘れちゃうなんて、そんなの嫌だよ」
私の胸を締め付けるような悲しみが襲ってきた。
少しでも奏さんと一緒にいたくて、奏さんを私の家に誘ったけど……。
まだ気持ちの整理ができてないままだったから、2人きりで向き合っても、どうしたらいいのかわからない。
こんな時に限って、私と奏さんの2人きりの時間をぶち壊してくれたロイたちもいないみたいだし。
ちらっと奏さんを見ても、奏さんは窓の外を眺めているだけ。
はぁ……。私、どうすればいいのかな?
簡単に結論が出るようなことじゃないってわかってるから、溜息が出る。
「今日、佐倉に詰め寄られた」
「智哉君に?」
智哉君、なんて言ったのかな? あまり酷いことじゃないといいんだけどな……。
「最近、お前がずっと悩んでいると言っていた。それで、お前を苦しませるなら別れろと言われた」
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