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「帰りがけに高木さんが持たせてくれて、トランクに入っている自家製の大根、白菜、ほうれん草。お前、全部手に持って帰れるのか?」
「…………」
すっかりそれを忘れていた貴子が思わず歯軋りすると、隆也が淡々とリクエストを出した。
「今の季節だったら、ぶり大根だな。今度食わせろ」
「あんたの好みなんて、知った事じゃ無いわよ!」
(とかなんとか口では言いながら、絶対作るよな。結構律儀な奴だし)
盛大に言い返してきた貴子だったが、隆也は口元が緩むのを抑えきれなかった。それを目ざとく見つけた貴子が、目を細めて睨み付ける。
「……一人で、何を笑ってるのよ?」
「別に、何も?」
(さて、今度はいつ顔を出す事にするか)
貴子が口にする文句の言葉をBGMにしながら、早速スケジュール帳を頭の中で展開した隆也は、同時に後回しになっていた初詣を実行するべく、次のインターチェンジで下りる為にウインカーを出して車線変更をした。
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