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「十四日の予定?」
「そう。九時には帰っている? もしそうなら、バレンタインのチョコを、その日に宅配便で送ろうかなと思ったんだけど。デートとかなら、その前後の受け取りやすい日にするわよ?」
何年も前からの恒例行事ではあったが、そろそろ姉からのチョコなど歯牙にもかけなくなるだろうから、止める潮時かもなどと思いながら貴子が話題を振ってみると、予想通り祐司は、如何にも申し訳なさそうに謝ってきた。
「ああ、予定があるんだ。悪い。できればその週末に届く様に、送ってくれるかな」
それを聞いて、つい笑いが込み上げてきてしまった貴子は、冷やかしモードに突入した。
「構わないわよ。本命チョコプラス、彼女とのデートですものね。お姉ちゃんのチョコなんて、そこら辺にうっちゃって当然よ。あ~あ、若いって良いわよね~」
「あのな」
「綾乃ちゃんと仲良くやってるみたいね、感心感心」
「……もういい」
ちょっと拗ねた様に短く答えて溜め息を吐いた弟に、貴子はクスクスと笑っていたが、ここで祐司は反撃の材料を思い出し、ここぞとばかりにそれを投げ返してきた。
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