第2章 意趣返し

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「そう言えば、姉貴の方こそ、榊さんとはどうなんだ?」  その途端、貴子の表情が剣呑な物になったが、電話越しに話をしている祐司には、当然その変化は伝わらなかった。 「……いきなり、何を言い出すのよ?」 「実家に連れて行ったんだろう? 結婚の前段階の挨拶に」 「何を寝とぼけた事、言ってんのよっ!!」  既定事実の如くそんな事を言われた為、貴子は盛大に叱り付けた。すると電話越しに、祐司の非難交じりの呻き声が伝わってくる。 「姉貴……、鼓膜が破れるから、いきなり絶叫しないでくれ」 「あんたがつまらない事をほざくからでしょうがっ!!」 「じゃあ、孝司が言っていた内容は話半分に割り引くとしても、どうして榊さんが、姉貴と一緒に家に出向く事になったんだ?」 「単に、アッシーにするつもりだったのに、孝司を丸め込んで押し掛けたのよ!」  貴子が苛立たしげに語った内容を聞いて、電話の向こうから溜め息を吐く気配が伝わって来た。 「何となく想像はついていたけど、姉貴らしくないな。榊さん相手だと、調子が狂うとか?」  その問いかけに、貴子は忌々しげに一応同意する。 「今までに遭遇した事のない、タイプだって事は確かね」 「正直に言わせてもらうと……、俺は榊さんの奮闘に期待したい」 「穴掘って埋めるわよ? 祐司」  ドスの効いた声で、暗にこれ以上何も言うなと脅しをかけたが、祐司はそんな事は気にせず、しみじみとした口調で語った。 「綾乃も『隆也さんだったら頼りになるし、任せて安心だと思う』って、太鼓判を押していたしな。驚いたよ。孝司から送信された画像を見せたら、昔からの知り合いだったみたいで。思わず『世の中って広い様で狭いって本当だな』と言い合ったんだ」
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