第15章

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 ちょっと緊迫した雰囲気になりかけたところで、気分直しといった訳ではない筈だが、再びギャルソンがやって来てポタージュを配って行った。そして綾乃が「冷めないうちに飲もうね!」などと明るく促し、皆で飲み始めたところで、椅子の背もたれと背中の間に置いておいた自分のバッグから、スマホが着信を知らせるメロディーを通常の音量で奏で始めた為、幸恵は自分の迂闊さを呪った。 「すみません」 「いや、構わないから」  向かい側に謝罪をすると君島が鷹揚に頷いてくれた為、うっかりマナーモードにするのを忘れていたそれを沈黙させようとした幸恵だったが、ディスプレイに浮かび上がっ発信者名を見て、考えを変える。 (香織さん? 噂をすれば影ってこの事だわ)  何となく泉に関する話の様な気がした幸恵は、再度君島に断りを入れた。 「すみません、ちょっとだけ出ますので」 「ええ、どうぞ」  その言葉に遠慮なく甘える事にした幸恵は、背中に視線を感じながら足早に窓際まで進み、その間に通話状態にしてスマホを耳に当てた。 「もしもし、幸恵ですけど。待たせてごめんなさい」 「幸恵さん、今日婚姻届を出して来たんでしょ? 和臣さんと記念のお食事中だったら、邪魔してごめんなさいね?」  恐縮気味な義姉の声に、幸恵は困惑しながら話の先を促してみる。 「いえ、それは良いんですけど、何か急用ですか?」 「う~ん、急用ってわけじゃ無いんだけど、幸恵さんが気にしてると思うから、早めに知らせておこうと思って、電話してみたの」 「何ですか?」 「それが……、さっき篤志さんから泉さんに電話があって、暫く二人で話してたの」 「本当に!?」 「ええ」  思わず声を荒げた幸恵に、少し離れたテーブルに着いていた三人は何事かと彼女に目を向けたが、そんな事はすっかり頭の中から抜け落ちた幸恵は、勢い込んで香織に尋ねた。 「頭ごなしに怒ったり、問答無用で叱りつけたりしなかったでしょうね?」 「どんな会話だったかは正確には分からないけど、泉さんは終始落ち着いててニコニコ笑ってたし、大丈夫なんじゃない?」 「そうなんだ……。それなら良かった。やっぱり気になってたの」  しみじみと幸恵がそう告げると、電話越しに香織が小さく笑う気配が伝わる。 「でしょうね。だから早目に教えてあげようと思って」 「ありがとう、香織さん」
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